■ テスト勉強


テスト後の掃除はどうも力が入らない。
眠気に襲われるのもあるが、俺の場合は空腹のためだった。
頭を使えば腹がすく、腹が満たされれば眠くもなるが勉強に力が入る。
これが俺の勉強と食事のサイクルだ。
「なあ、帰りにミリストの方よって行かねえ?」
そんな友人の誘いを断り、HLが終わるとすぐさま俺は、生徒会室でパンに噛り付いた。
「野瀬?今日招集は無いよ?」
「え、まじで」
そう告げた杉山は、けれど生徒会室に入って来る。
「お前は?」
向かいにカバンを置いて座った友人にきくと、まさに優等生な答えが返って来た。
「明日のテスト勉強。ここなら静かだし、机も大きいからね」
「へー」
「で、大丈夫そうなの赤点」
「英語がやばいな」
「そっか」
筆箱や教科書をカバンから出す間にそれだけ言って、杉山はすぐさま自分の世界に入って行った。
残されたのは俺と、市販の野菜ジュースを飲む音だけだった。



冷たい風が頬を撫でるのを感じて僕はノートから顔を上げた。
ココアを作りながら見れば、もう夕方で、向かいで野瀬も勉強している様だ。
珍しく思い、彼が気付かないのを良い事にまじまじと眺める。
ふと、書かれた公式に目が止まった。カップを置いて、二三回読んでみると引っかかった所が見つかった。単純な写し間違いだろう。
「野瀬」
「……何?」
「そこマイナス。で、そこがプラスになる」
「あ、ほんとだ。ありがとう」
彼の赤丸ばかりのノートに、もう少しやろうかとシャーペンを手に取った。